TRICODING : Armin Strom
MIRRORED FORCE RESONANCE
対称美が生むリズム
くろのぴーす Chrono Peace
ふたつが、ひとつとして同じ音を奏でる。この時計を所有して得られる感激はそこにある。まるで昆虫、もしくは新しい生物かのようにクラッチスプリングが動く姿は見ていて飽きない。しかし、言わばふたつの時計を連結する構造からか、時折片方のテンプが動きにくくなる。これは特徴として愛するしかないので「あばたもえくぼ」だろう。
単純なアイデアこそ、具現化が困難であることを象徴するかのような腕時計である。人と同じく複数となれば問題は何倍にもなり、その調和に要する調整は想像を超える。それをあえて人に見せる中心に据えることによって、強烈なアイデンティティとなっている。そして、表も裏も貫徹された対称美には一見の価値がある。
ふたつのテンプを見せ物にするチープな腕時計はたくさん存在する。しかし、スプリングを用いたレゾナンス機構が気に入らないジュルヌ氏からの…
ヒゲ持ちを連結した最右翼
広田雅将 Masayuki Hirota
ふたつのテンプを同期させるというアイデアは、精度を向上させるだけでなく、この時計に独特のモーションを与えた。ふたつのテンプがトーンを整え、徐々に連動していく様は、それだけで鑑賞に値する。ただしこの時計の魅力は、実際に見ないと分からない。実際に見て、腕に置いてみなければ分からないだろう。
レゾナンスという機構は、さまざまな時計師が取り組む、夢の機構のひとつである。色々なアプローチが存在するが、ヒゲ持ちを連結させるアイデアは無二だ。本作はあらゆるレゾナンスの中でも傑出してユニークだが、レゾナンスはもちろん、ヒゲ持ち連結というアイデアも、よほどの玄人でも理解しにくいだろう。
そもそも独立時計師は極めてニッチな存在だ。加えてレゾナンスという機構は…
続きはクロノセオリーマガジン本誌でご覧ください。